人間はもともと蛆に起源を持つもので、その蛆というのがぞっとしない単純極まりない管であり、中身は空っぽ、あるといえば悪臭を抱え込んだ虚ろな闇ばかりなのだ、という自らの考えを彼は打ち消すことができなかった。--- プラトーノフ
2005/11/12
ラムサールで踊ろう
ニュースは偉大である。
というより、こんなニュースを聞けるということのメディアの偉大さというべきか。
場所は和歌山、串本。
そこそこキレイな海のある場所だ。
珊瑚礁があるほどなのだから、それは誰も否定しない。
そこに人が集まったのが晴れの広がった今日の串本漁港。
最近はどこもかしこも記念物だらけである。
バス停のベンチで座っているお婆も知らぬうちに記念物になってしまうものだ。
それが気まずいって言うので、バスの中には色違いのイスが居並んでいる。
そうすることで、非記念物人を座らせないようにするわけである。
ちなみに、チェルノブイリの衝撃的な話。
十代の子供たちが初老連中に席を譲らないという。
その理由は、連中より先に自分たちの方が早く死ぬからというのだ。
意味は違うが、自らを記念物化したという意味では論理は同じである。
この数千年、人間は大して変わらないのに、周りはすっかり変わっているという。
こりゃたいへんなことだっていうので、記念物という唾をつけて回っている。
串本も、最近この唾がついた場所だ。ただ、その唾のつかなかったのがオニヒトデさん。
そうとも、大気中にはたいそうなメロディが鳴り響いている。
こいつは大砲の音だ。耳を凝らしてみよう、「ラムサール、ラムサール♪」と聞こえるでしょ。
そして今日。
テレビの画面に、この勝ち気なメロディに合わせて踊る男女の姿。
勿論、われらがホモ・サピエンスちゃんである。
ウェット・スーツに身を包む我らが同胞女サピエンスちゃんはラリって口走ったわけではなかろうが、大事なことを忘れていたようなのだ。
サピエンスちゃんたちの左脳からビンビン流れてくる歌はこうだったー
♪あいつは、あいつは、オニヒトデ
♪退治だ、やつらだ、無脊椎
♪グニャグニャ、ヘニャヘニャ、きもいやん
同胞サピエンスたちには邪魔に見えたようだ。
そこで、グリーン・ピースには格好の餌食なんめる女サピエンスちゃんのナチナチ言葉。
「こうやって駆除してると、自然が戻ってくるっていうかぁ...」
オニヒトデは自然にはいないもののようである。
非サピエンスちゃん系動物番組を作るTBSのサイトに、オニヒトデに関する次のような解説があった。事実を述べるのには直説法で書くのが当然で、この解説には自然大好き女サピエンスちゃんに確たる動機の裏付けを提供する表現が満載なのであーる。
【引 用:南方系のヒトデで、珊瑚礁に棲む。腕の数が11〜16本もあり、大型で全身に棘があって恐ろしげな姿をしている。体の下側の真ん中にある口から胃袋を 出し て消化液を分泌し、生きているサンゴを食べる。棘には毒があり、ヒトも刺されると危険である。魚のすみかや観光資源となるサンゴを食い荒らす上、ダイバー などが刺されて危険な目に遭う可能性もあるので、たいへん嫌われているヒトデである。大型巻貝のホラガイが天敵で、本種の毒棘もホラガイに対しては役立た ず、食べられてしまう 】
女サピエンスちゃん以下、自然をこよなく愛するサピエンスちゃんたちの過ちは次の点にあろうか。つまり、ホラ貝を放流してサピエンスの偉大なる智慧を自然界に顕示しなかったこと。
自分から罪をかぶったことである。
た ぶん、この後、大して血も流さんだろうオニヒトデ殿からその物言わぬ闇に突き刺さるエコロジカル・ウェイ・オブ・シンキンを抜き取ると、コエンザイム信 仰のメッカたる自宅に帰り、自然食を口一杯頬張るのである。たぶん、味はおいしくはない。せいぜい、星一つが精一杯だろうか。
そうそう、ちなみにヒトデは「スターフィッシュ」...
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